研究概要
非天然アミノ酸を含む特殊環状ペプチドの合成研究
1)環状ペプチド抗生物質の合成と構造活性相関研究既存の抗生物質が効かない多剤耐性菌の出現は、化学療法による感染症治療を困難なものにしつつあります.
これを克服するために、微生物膜に直接作用して膜構造を破壊する膜作動性ペプチド抗生物質(抗菌ペプチド)
の研究が盛んに行われています.我々は、環状ペプチド抗生物質の様々な改変体を化学合成し、その生物活性
(抗菌活性・溶血活性・細菌膜透過性)や立体構造解析をもとに、副作用の少ないペプチド抗生物質の開発に
向けた基礎研究を展開しています.
2)N-メチルアミノ酸含有ペプチドの簡便合成法の開発
異常アミノ酸を含む天然ペプチドは、医薬品のリード化合物やケミカルバイオロジー研究に資する機能性
分子として有用な化合物群です.これらのペプチドを化学合成する際、正攻法で1残基ずつ伸長しようとしても
縮合が全く起こらないこともあり、結果的に収率や純度の大幅な低下を招きます.特に,N-メチルアミノ酸残基
が連続する部分配列を有するN-メチル化ペプチドの化学合成においては欠損ペプチドの副生がしばしば問題とな
るため,これを抑制する効率的な合成手法の開発が望まれます。我々は、保護ペプチドへの直接N-メチル化反応
やマイクロ波照射下での脱水縮合反応によりこれらの特殊ペプチドを効率良く簡便に合成するためのプロセスを
研究しています.
核医学的診断・治療に資する放射性標識化ペプチドの開発
放射性同位元素(RI)は、生命科学研究において不可欠なツールであり、医学分野では
画像診断・放射線治療の際に用いられます.当研究室では、腫瘍特異的に結合する
ペプチドリガンドや抗腫瘍剤をRI標識化するための合成手法を開発し、がんの早期
診断やRI内用療法に基づく治療への応用を目指して研究を行っています.
(量子科学技術研究開発機構・群馬大学大学院医学系研究科との共同研究)
細胞膜透過性ペプチドの合成と生物活性評価
膜透過性ペプチド(Cell penetrating peptide, CPP)は、細胞膜を破壊することなく細胞内に移行できるペプチド
の総称であり、DNAやタンパク質などの生体高分子を細胞内へと輸送するためのツールとして有用です.
当研究室では、非タンパク質性アミノ酸を組み込んだ新規CPPの合成と細胞内移行性について研究しています。